中日新聞によれば政府は北方領土問題を含むロシアとの平和条約締結交渉について、六月のプーチン大統領来日に合わせた大筋合意を断念する方針を固めた。
歯舞(はぼまい)群島、色丹(しこたん)島の二島引き渡しにより決着させる案で交渉に臨んできたが、ロシア側は応じず、進展の見通しが立たないためだ。
それに代わるプーチン氏来日時の成果として、北方四島が含まれるサハリン州と北海道の間に限り、短期滞在の査証(ビザ)を相互免除することで合意する案が浮上している。
日本政府筋が十八日、明らかにした。
安倍晋三首相は五月に訪ロする方向で検討していたが、ロシアの強硬姿勢を踏まえ見送りを決定。
今後はロシア極東での経済協力などを進めつつ、北方四島での共同経済活動の実現をてこに交渉前進を目指す従来路線に戻る形となり、膠着(こうちゃく)状態が続くのは避けられない。
二島返還での決着案については、引き続き可能性を探るとみられる。
日本側は、大阪で六月二十八、二十九日に開催する二十カ国・地域(G20)首脳会合でのプーチン氏来日時に交渉を大筋合意へ持ち込む戦略を描いていた。
だがロシア側は、日本へ返還した島に、日米安全保障条約に基づき米軍が展開する懸念を強調。現在の北方領土がロシア主権下にあると認めることが条約締結の条件だと重ねて主張し、受け入れられないとする日本側との溝は埋まっていない。
日本政府高官は「領土問題を巡り、G20の際に何らかの合意を得るのは客観的に見て難しい」と明言した。外務省幹部は「G20は通過点にすぎない」と説明した。
サハリン州と北海道の間のビザ免除に関しては、ラブロフ外相が両国間の関係発展に向けて実現を提案。
日本側も北方領土交渉の環境整備につながるとして「検討に値する」(政府関係者)との立場だ。
首相とプーチン氏は昨年十一月の会談で、歯舞群島と色丹島の引き渡しを明記した一九五六年の日ソ共同宣言に基づき交渉を加速させる方針で合意していた。
急転直下のウルトラCを期待するが安倍首相の国内政治の技を見ていると国際舞台で力量は発揮できないのではなかろうか。