詩吟をしている仕事仲間の話を伺う。知らない分野の話を聞くのは楽しみだ。己の知っていることはごくわずかで間違っていることも多々ある。
自分が話す時間より聴く時間に心がける。
古稀を迎え杜甫の『曲江』が古稀の出典と知る。曲江とは川の名前。杜甫の漢詩では古稀は刹那的な表現となる。杜甫のような立派な人でも、人生とはこんなものかと垣間見る。朝回日日典春衣
毎日江頭尽酔帰
酒債尋常行処有
人生七十古来稀
穿花キョウ蝶深深見
点水蜻テイ款款飛
伝語風光共流転
暫時相賞莫相違
毎日朝廷の仕事が終わると春着を質屋に入れ、
その金で曲江のほとりで酩酊するまで飲んで、帰ってくる。
飲み代のツケはほうぼうにあるが、かまうものか。
どうせ七十歳まで生きられることは稀なのだ。
花の蜜を吸うアゲハチョウが花々の奥深くに見え、トンボは水に尾を点々と触れながら飛んでいく。
この素晴らしい景色に対し、言いたい。
すべて自然は移り変わっていく。
だからほんのしばらくでもいい、一緒に楽しもうじゃないか。(漢詩の朗読より転載)