審査員仲間が内田康夫著『鐘』を持っていたので尋ねる。
同じメンバーで行く審査は少なく、出会いも愉しみ。
夕食などを共にし相手の考え方を知る機会もあり内省する。
内田康夫著『鐘』は浅田光彦シリーズの推理小説で各地の地理に詳しく、それを知るのも面白い。
滅多に小説を読まないが、面白そうなので読んでみる気になる。
なんでもきっかけがあり、いずれだけでは物足りず、本屋さんで『鐘』を見つける。
“浅見光彦”シリーズで内田さんの初めての新聞連載作品だったとのこと。
浅見家の菩提寺である聖林寺の鐘に血の滴った跡。住職の依頼に挑発され、母・雪江が浅見に真相解明を命じるというのが、本シリーズとしては珍しい幕開け。
そして関係するとみられる殺人事件。その被害者のポケットからみつかったのは四国・琴平電鉄の切符。警視庁・升波警部からの協力依頼もあり、早速浅見は高松へ飛びます。
そして出会ったのは、似通った自殺事件。浅見は殺害事件と直感し、更に調査を進めます。被害者たちが言い残した「カネ」とは、金ではなく鐘のことなのか。関係者たちの出身地である富山県高岡市は、日本有数の鐘の生産地。高松・尾道・高岡、そして鐘に繋がるミステリ、というのが本書ストーリィ。
浅見の調査に同行する警視庁の田原部長刑事は、最初から浅見の探偵能力を軽視する様子。そのため本作品は、田原対浅見を象徴とし、データ・証拠依存の警察と直感・仮説ベースの浅見との対比が、これまで以上に強く出ている作品。