2008/8/23 毎日新聞によればグルジア南オセチア紛争をめぐり、米国が人道支援目的で戦闘艦を含む艦船3隻のグルジア派遣を決めたことで、既にグルジア沖に展開しているロシア黒海艦隊と相対する構図が生まれる。この海域はロシアが歴史的に「自国の裏庭」と位置付けているだけに、今後、双方の間で緊張が高まる可能性がある。ロシアはNATOとの軍事協力を一時、凍結すると表明した。
ロシアは今回の紛争で、グルジアからの独立を求めるアブハジア自治共和国沖などに艦船を派遣、グルジア軍艦艇を撃沈するなど作戦行動を展開した。今後も船舶の臨検活動を継続する方針だ。
一方、米艦船は近くの港湾都市ポチに入り、人道支援物資を陸揚げする計画だ。ポチはロシア軍の攻撃で港湾インフラなどが破壊され、大きな損害を受けた。米側がポチを入港先に選んだのは、グルジアの戦略的に重要な港を押さえる狙いがある。またポチは、ロシア軍が一時支配したグルジア中部ゴリと幹線道路で結ばれており、ゴリの復興支援も想定している模様だ。
ロシア軍のノゴビツィン参謀次長は22日の会見で、米国が人道支援目的と説明する艦船派遣について、「その必要性と有効性は極めて疑わしい」と批判した。また、ドイツとスペインのフリゲート艦各1隻が同日、黒海入りしたことを明らかにした上で、「北大西洋条約機構(NATO)諸国の艦船が黒海に来ても地域の安定化にはつながらない。すでに(ロシアの)黒海艦隊の監督下にあり、外国艦船の出動強化の必要性はない」と指摘した。
ロシアは帝政時代の18世紀に黒海艦隊を創設、19世紀に黒海の制海権を掌握した。ソ連崩壊後もウクライナ領となったクリミア半島のセバストポリに基地を置き続けている。米軍艦船の黒海での活動が、「カフカスの安全保障を歴史的に担ってきた」(メドベージェフ露大統領)と自負するロシア側を刺激するのは必至だ。
米国はロシアを刺激する策としてロシアの裏庭である黒海に足を踏み入れ、米ロの緊張が高まる。落としどころがあるのか気になる。日本は外交メッセージ出せずにいるが、常任理事国を望む日本は国際紛争に関わる能力はないのか。