2008/3/17 毎日新聞によれば中国チベット自治区ラサで起きた漢民族支配に抗議する大規模な暴動で、インド北部ダラムサラにあるダライ・ラマ14世が率いるチベット亡命政府は16日、ラサ市内で少女5人を含む80人の遺体が確認されたと明らかにした。
中国当局は国営新華社通信を通じ「犠牲者は10人」と発表している。亡命政府側の主張が事実なら89年のラサ暴動の死者16人を大幅に超える。国際社会が対中批判を強めるのは必至で、胡錦濤指導部は難しい対応を迫られそうだ。
これとは別に、暴動はチベット自治区以外にも拡大。四川省北部アバ・チベット族チャン族自治州では16日、数千人の僧侶らのデモ隊と治安当局が衝突し、治安当局が発砲。この衝突で僧侶を含む8人が死亡したという。
北京五輪を間近に控え、チベットの騒乱により中国の政情不安が露呈した。また大気汚染の影響もあり、出場を辞退する選手もおり、さらには競技直前まで日本で練習する国もある。その他、食の安全も気がかりで、自国から食材を持ち込む国もあるという。中国は面子を慮り、事件を過小評価するが実態は厳しく、北京五輪が思わぬアクシデントに見舞われないよう願う。
福田首相はかかる事態に対し胡錦濤主席に自制のメッセージを伝える政治度胸はないのか気になる。『双方が受け入れられる形で、関係者の対話が行われることを歓迎する』程度の毒にも薬にもならないコメントでお茶を濁す。日本と利害関係のある国から見れば、己の考えを表示しない、みっともない国だなあと揶揄されるだろう。親中国を自認する野党も同じである。国内で揉めていては国際問題まで突っ込む余裕はないのか。アメリカはいかなるときでもタイミングを外さずメッセージを送る。この差は何処にあるのか気がかりだ。フランス外相も懸念を伝え、北京五輪開会式をボイコットするという。
チベット騒乱は中国政府は独立を希求しているダライ・ラマを交渉相手としないとしているが、実際は胡錦濤主席が交渉では真っ向勝負できないと感じているところに問題があるのではないかと思う。