滝口康彦著『異聞浪人記』は武家社会の不条理を突くストーリー。
武家社会が崩れていく徳川末期、浪人となり、生活に困窮し、武士の面目を失うなら、いっそう藩邸の玄関を借り狂言切腹を図り、困惑した藩邸は何がしかの金品を与えるという事件が続いた。
そんな折、津雲半四郎と無二の仲であった浪人、千々岩求女が薬代が欲しく藩邸にて切腹を願ったが、覚悟を見透かされなぶり殺しにあった。
津雲半四郎は意趣返しの為、藩邸に入りふところから千々岩求女を死に追いやった武士共の、すでに用意してあったもとどりを投げつけ乱刃に切り刻まれる。
ほぼ同時刻に前後して、切腹を強く促したもとどりを取られた武士共も面子を失い割腹する。
この本に基いた映画『一命』が、第64回カンヌ国際映画祭コンペティション部門へ正式出品されたが賞は逃した。
1958年に発表された、滝口康彦による原作「異聞浪人記」をもとに、貧しくとも、愛する人と共に生きることを願い、武家社会に立ち向かった二人の侍の生き様を描いた映画。
原作「異聞浪人記」は、1962年に『切腹』(小林正樹監督/仲代達矢主演)として映画化され、第16回カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞している。
本作は、3大映画祭(カンヌ、ベルリン、ヴェネツィア)のコンペティション部門にて、実写版としては初めて、3D作品として選出され、カンヌ映画祭ではコンペ部門で初の3D上映となる。
日本公開は、2011年10月で『一命』。
なお、海外版タイトルは『HARA-KIRI: Death of a Samurai』となっている。