渡辺一夫著他『ルネサンス』の中でエラスムスとトマス・モアの関係について述べている。
エラスムスは当時のヨーロッパ社会の各階層の人間を、その冷徹な目で眺め、人間がいかに狂気や痴愚により動かされやすいか、その結果いかに愚劣な不幸の中へでも平然として飛び込んでいくとないは、今の日本の利権に貪る原子力推進派にも当てはまる。
モアは理想国を紹介する形で、理想国の美質をもっていない現実の国家への痛烈な風刺を行う。
両者とも親交があり帰結するところは同じで影響しあった。
モアは大法官に就任するもヘンリー八世の離婚問題で当時のローマ教会からイギリス国教会を独立させたが、これに反対し大逆罪に問われ斬首された。
エラスムスはカトリック、プロテスタントのどちらにも与せず、優柔不断と罵られ失意のうちに病死した。
突出した有能な人材が輩出すると、嫉妬する利害関係者は邪魔に入り命をも狙う。
いつの時代も変わらない。